園長のコラム

園生活の中での日々の子供たちとの関わりから、私たち大人が「よりよく生きる」ことを考える・・・「幼児教育」をテーマに神明幼稚園の園長自らが、思いを綴ります。

第12回 「五感を通じて知る」ということ

2匹の亀さん


亀を見る子ども達 子どもたちが「幼稚園の亀さん」の周りに集まっています。あおぐみ(年長)のお当番さんが、亀にエサをあげたり、亀のおうちをお掃除したりしているところ。それを赤い帽子の年少の子どもたちが、興味深そうにいっしょに見ています。神明幼稚園の2匹の亀さんは、子どもたちの大の人気者なのです。
 この2匹の亀さんは、子どもたちに人気があるだけでなく、時には私たち保育者を助けて「いい仕事」をしてくれる有能な仲間でもあります。入園したばかりの頃に「お母さあ~ん」と言って泣いていたのが、先生に亀さんのところに連れてこられて「あっ亀さんだ」とうまく気をそらされ、それからニコニコと幼稚園に通えるようになりました(^-^)。なんていう微笑ましい場面を見るのも毎年のことです。亀さんの「泣いている子を泣きやます能力」は侮れないのです(^-^)。
亀さん  さて、図鑑やテレビで亀さんを見たことのある子、ウサギと亀などのお話を通じて亀さんを知っていいる子はたくさんいるでしょうが、実際に亀さんにふれたことのある子はどれだけいるのでしょうか。メディアを通じて亀さんを「知っている」ことと、実際に自分の目、耳、鼻、五感を通じて亀さんを「経験すること」は本質的に違うことではないか、と私は思います。

  幸いなことに神明幼稚園では亀さんを飼っているので、うちの子どもたちはみんな亀さんのことを、経験を通じて知っています。亀さんの甲羅が固いこと。おどろかすと頭や手足を引っ込めてしまうこと。首を長~く伸ばすと随分と伸びること。ゆっくりと歩くこと。でも、ちょっと目を離すと案外早く移動していること。意外と重いこと。でも持てないほど重いわけではないこと。これが「本当に知っている」ということだと思うのです。

 
  先ほどの「亀さんの世話係りの写真」には続きのエピソードがあって、亀さんのお散歩をさせていた子どもたちが私のところに飛んできて、亀さんが逃げちゃった!捕まえて!と言いました。私が「自分で捕まえておうちに帰してあげなさいよ」と言うと、女の子たちが「できな~い!無理無理!」と言いました。私はさらに「あおぐみ(年長)なんだからできるでしょ!」と言って、しばらく経ってみると、さっきの女の子たちが意気揚々と亀さんを手に掲げて、おうちへと連れて帰る後ろ姿が見えました。彼女たちは自分達の手を通じて亀さんの重さ、硬さを知り、その経験はしっかりと彼女田h氏の心に刻まれたと思います。

 

 「感覚統合」の考え方

 話は替わりますが、近年、日本の子どもたちの学力の低下が問題となり、学力テストの結果への社会的関心が高まっているようです。その結果、幼稚園や保育園の時期から知的な訓練をさせようとする流れがあることを感じています。

 私は、幼児期から知的な教育をすることに決して反対なわけではありませんが、その方法はあくまで「感覚統合(注1)」の考え方に基づいて、五感を通じた経験をしっかりとする機会を設けることが大切だと思っています。神明幼稚園では、この幼児教育の基本を表現した「あそびこむ」という本園のテーマから外れることなく、子どもたちの「人間としての土台」を作っていきます。このコラムを読んだ方も、どこの幼稚園・保育園に通わせようと、まずは五感を通じて知ることこそが、0歳~2歳の乳児期、3歳~5歳の幼児期の教育の要諦であることを忘れずに子どもたちを育ててほしいと願っています。

 

注1)感覚統合=乳幼児期の知的発達は「感覚の入力⇒運動⇒感覚の統合⇒成果物」というプロセスを繰り返すことである、と言う考え方。乳幼児期の教育の基本的な理論。