やりたいからやること やりたくないけどやること

幼稚園での子どもたちの生活場面について、こんなマトリクスを作ってみました。

やるやらない
やりたいやりたいからやるやりたいけどやらない
やりたくないやりたくないけどやるやりたくないからやらない

軸には、やりたいか、やりたくないか。
横軸には、やるか、やらないか。
すると図のような4つの領域が出来ました。

  1. やりたいからやる
  2. やりたくないけどやる
  3. やりたいけどやらない
  4. やりたくないからやらない

私は、子どもたちに幼稚園の生活の中で、この4つの経験をぜ~~んぶ、しっかりと経験してほしいと願っています。

1つ目の「やりたいからやる」こと。これは言うまでもなく、幼児期の子どもたちにとってとても大切な経験です。あれをやってみたい。これをやってみたい。出来るようになりたい。上手になりたい。幼稚園で出会うさまざまなことに興味を持ち、意欲を持って取り組む子になってほしいと思います。「遊びの時間」では、自分からやりたい遊びを見つけて、それを自ら工夫して発展させていく子どもたちに育ってほしいですし、「クラスの時間」では先生が提供する活動にこどもたちが自ら興味を持って取り組むように、私たちはいつも言葉かけや環境設定に工夫をしています。

2つ目の「やりたくないけどやる」こと。これも①と同様に幼児期の子どもたちにとって大切な経験です。楽しく遊んだ後のお片づけ。次の日も楽しく遊ぶためにはやらなくてはいけないことです。かけっこで負けるのが嫌だから、おにごっこで鬼に捕まるのが嫌だから、「やりたくない」と言う場面はよく見る光景ですが、乗り越えて挑戦する子になってほしいなと思います。最初は「やりたくないからやらない」から始まって、「やりたくないけどやってみる」と「折り合いをつける」ことを子どもたちは学んで成長していきます。

3つ目の「やりたいけどやらない」ことも大切です。「遊びの時間」にせっかく砂場でどろだんごを作り始めたのに片づけの時間になってしまったとき。ターザンロープがやりたくて園庭に飛び出していったら先に他のお友だちが遊んでいたとき。幼稚園の生活の中ではそんな場面がしばしばあります。2つ目と3つ目は、自分の感情と状況に不一致が生じる場面ですが、そんなことはこれからの人生でいくらでもあることです。心理学では「情動の抑制」という言葉を使いますが、要するに「がまんする」ということです。

4つ目は「やりたくないからやらない」こと。これも生きていくうえで時には必要な経験です。大人しくていつも活発な子の意見に従っていた子が、「いやだ!僕はこれがやりたいんだ!」と主張したとき、一歩を踏み出した勇気を認めるべきだと私は思います。いつも「いやだいやだ」では困りますが、時には断固拒否するべき場面も人生の中では必ずあるからです。

以上の4つの経験をしっかりとしてほしい、と書きましたが、幼稚園の段階でこの4つがすべて出来なくてもいいと私は思っています。子どもたちのタイプによって、①が苦手な子、②③④が苦手な子。全部ありだと思います。また、小学校、中学校・・・と進んでいく中で、タイプも変化してきます。小さい頃はもじもじして自分の意思を明らかに出来なかった子が、中学高校では生徒会長になりました、なんていうケースは私たちの周りでもしばしばありますよね。

考えてみれば、この4つの経験は人生の続く限り継続するテーマなのかもしれません。私たち大人の日常もこの4つの領域の繰り返しです。そんな温かい目で子どもたちを見守っていきたいですね。

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